第三者情報取得手続とは?-財産調査を進めるための制度-
2026/07/24
はじめに
「判決で勝訴したのに相手がお金を支払ってくれない」「強制執行をしたいが、相手の財産がどこにあるのかわからない」
このようなケースは、債権回収の場面で少なくありません。
従来は、債権者が自力で相手の財産を調査しなければならず、判決を取得していても財産が見つからず回収できないという問題がありました。
そこで、令和2年(2020年)の民事執行法改正により創設・拡充されたのが第三者情報取得手続です。
この制度を利用することで、一定の場合には金融機関や市区町村などの第三者から、債務者の財産に関する情報を裁判所を通じて取得できるようになりました。
今回は、第三者情報取得手続の概要や利用できる場面、注意点について解説します。
第三者情報取得手続とは
第三者情報取得手続とは、裁判所を通じて第三者が保有している債務者の財産に関する情報の提供を受ける制度です。
強制執行を行うためには、預金口座や勤務先などの財産を特定する必要があります。
しかし、債権者がこれらの情報を把握していないことは珍しくありません。
そこで、裁判所が金融機関などに対し情報提供命令を出し、その結果を債権者が利用できるようにしたのが第三者情報取得手続です。
この制度により、従来よりも強制執行を実効的に行いやすくなりました。
どのような情報を取得できるのか
取得できる情報は、相手方や照会先によって異なります。
代表的なものとして、次のような情報があります。
1 預貯金口座に関する情報
銀行、信用金庫、信用組合などから、
・預金口座の有無
・支店名
・口座番号
・預金残高
などの情報を取得できます。
口座が判明すれば、その後に預金差押えを申し立てることが可能になります。
2 勤務先に関する情報
市区町村などから給与の支払者に関する情報を取得できる場合があります。
勤務先が判明すれば、給与債権の差押えを検討できます。
給与差押えは継続的な回収が期待できるため、有効な回収方法の一つです。
3 不動産に関する情報
登記情報などから所有不動産を調査できる場合があります。
不動産を所有していることが判明すれば、不動産執行や担保設定の有無などを踏まえた回収方針を検討できます。
利用するための条件
第三者情報取得手続は、誰でも自由に利用できるわけではありません。
一般的には、
・確定判決
・和解調書
・調停調書
・仮執行宣言付判決
・公正証書(強制執行認諾文言付き)
など、強制執行が可能な債務名義を有していることが必要です。
また、取得する情報の種類によっては、一定の要件や手続が定められています。
そのため、事案によって利用できるかどうかは個別に判断する必要があります。
第三者情報取得手続のメリット
1 財産調査の負担を軽減できる
債権者自身で調査を行うことが難しい場合でも、制度を利用することで財産の手掛かりを得られる可能性があります。
2 強制執行につなげやすい
預金口座や勤務先が判明すれば、差押えの対象を具体的に特定できます。
判決を取得しただけで終わることなく、実際の回収につなげやすくなる点が大きなメリットです。
任意の支払いにつながる場合もある
債務者にとっては、財産調査や差押えが現実味を帯びることになります。
その結果、強制執行を避けるため、自主的に支払いに応じるケースもあります。
利用する際の注意点
第三者情報取得手続は非常に有効な制度ですが、万能ではありません。
例えば、
・必ず財産が見つかるとは限らない
・財産が存在しなければ回収できない
・情報取得の対象となる機関や情報には法律上の制限がある
・手続には裁判所への申立てや一定の費用・時間が必要
といった点には注意が必要です。
また、取得した情報をもとに、どの財産を差し押さえるべきかを適切に判断することも重要です。
弁護士へ相談するメリット
第三者情報取得手続は、制度自体は比較的新しいものですが、債権回収の実効性を高める重要な手段です。
もっとも、
・手続を利用できるかどうか
・どの情報を取得すべきか
取得後にどのような強制執行を行うか
によって、回収できる可能性は大きく変わります。
弁護士であれば、判決取得から財産調査、第三者情報取得手続、差押えまで一貫してサポートし、状況に応じた最適な回収方法をご提案できます。
まとめ
第三者情報取得手続は、債務者の財産がわからず回収に行き詰まっている場合に、有力な解決手段となる制度です。
判決や公正証書があっても、「財産がわからないから回収できない」と諦める必要はありません。
もっとも、利用できる要件や取得できる情報には一定の制限があり、事案ごとに適切な手続を選択する必要があります。
未払い金や貸金、売掛金などの回収でお困りの方は、第三者情報取得手続の利用も含め、一度弁護士へご相談ください。状況に応じた最適な回収方法をご提案いたします。